StrutsからSpringへのコンバート、自動ではできないこと
自動コンバートで“すべておまかせ”とはいかない
かつて基幹システムや業務システム開発の主流だったStrutsは、現在も多くの企業システムにおいてアプリケーションフレームワークとして利用されています。しかし、すでにStrutsは開発もサポートも終了しており、今なお利用し続けることは、セキュリティや運用面でのリスクが日々高まる一方です。
こうした背景から、StrutsからSpringへの移行が進められており、各種の自動移行ツールも登場しています。とはいえ、「変換ツールがあるなら、すべて自動でやってくれるのでは?」という声が上がることもあります。
たしかに、StrutsからSpringへの移行には自動変換できる部分も存在しますが、「すべてお任せ」とはいきません。本記事では、「どこまでが自動で対応できて、どこから人の手が必要か?」を、技術に詳しくない方にもわかりやすく、たとえ話を交えながら解説していきます。
自動変換できるのは“骨組み”まで
まず、自動化で対応可能な範囲を見てみましょう。たとえば、Strutsの設定ファイル(struts-config.xml)をSpringのJava設定クラスに変換したり、JSPに埋め込まれたStrutsタグをThymeleafなどのテンプレートエンジンに置き換えたりする作業は、ツールを使えばある程度自動で対応できます。また、バリデーション定義の一部も自動的にSpring Validationへマッピング可能です。
これは例えるなら、「古い家の図面をもとに、新しい家の骨組みを自動で建てる」ようなものです。図面が整っていれば、部屋の配置や窓の位置など基本的な構造は再現できますが、内装や配線、家具の配置といった細部は手作業が不可欠です。システムも同様に、“骨組み”だけでは動作しません。次は、その「人の手が必要な内装工事」にあたる作業を見ていきましょう。

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自動ではできない4つの作業
以下は、スタイルズ社が提供する支援サービスにおいて、人の手で対応している主な作業項目です。

複雑なビジネスロジックの再設計
StrutsのActionクラスでは、入力チェック・データ変換・DBアクセス・レスポンス生成など、さまざまな処理が1つにまとまって記述されていることがよくあります。Springでは、これらの処理をController/Service/Repositoryなどに分離することが推奨されるため、構造そのものを見直す必要があります。
たとえるなら、「ワンルームに詰め込まれていた設備を、寝室・キッチン・バスルームに分けて整理する」作業に相当します。
画面遷移ロジック(Forwardチェーン)の見直し
Strutsでは、Actionから別のActionへと遷移する“Forwardチェーン”が多用されていましたが、Springではこの手法は推奨されていません。そのため、画面遷移全体の見直しと再構築が求められます。
これは、「回遊式の迷路を、一筆書きで整理された地図に描き直す」ような作業です。
カスタムタグや独自拡張の変換
Struts時代に独自開発されたタグライブラリや共通モジュール(バリデーションや認証処理など)は、自動ではSpringへ移植できません。仕様を確認し、Spring向けに再構築する必要があります。
たとえるなら、「特殊な部品で動いていた旧型車を、最新のエンジンに載せ替える」ような高度な作業です。
トランザクション管理や例外処理の再設計
Seasar2などと組み合わせていた場合、AOPベースのトランザクションや例外処理が組み込まれているケースが多くあります。Springでは@Transactionalアノテーションによる制御が基本となるため、これに合わせた設計の見直しが必要です。
実行コードトレースによる対象範囲の特定
スタイルズ社では、稼働中のシステムから「実際に使用されているコード」をログトレースにより抽出する独自ツールを提供しています。設計書が古い、もしくは存在しない場合でも、移行対象を明確に絞り込むことが可能です。
- 未使用のJSPやActionを除外し、不要な作業を削減
- リクエスト単位で実行パターンを記録・分類
- バリデーションや認可処理の呼び出し順も自動検出
このアプローチにより、「どこを移行すればよいかわからない」といった悩みを解消できます。
テスト工程:移行後の“ズレ”をどう検出するか
移行後によくある問題として、「同じ画面なのに挙動が違う」「バリデーションが効かない」といった不具合が挙げられます。Stylesでは、自動テストによる差分チェックを活用し、旧システムとの動作差を検出し補正する体制を整えています。
具体的には以下のような項目に対し、差異を検出・修正していきます。
- HTMLの出力差分の検出
- 入力パターンごとのレスポンス比較
- 業務シナリオに沿った網羅的なテスト実施
このようにして、「なんとなく違う」といった微細なズレも未然に発見できます。
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なぜ「人手による補正」が重要なのか
自動変換は、あくまで「移行作業の省力化」を目的としたものであり、「完成形」ではありません。利用者が求めているのは「旧システムと同じように使えること」です。
ビジネスロジックの微妙な違い、バリデーションの実行順序、画面遷移の仕様変更などが積み重なると、「動作はするが以前より使いにくい」「新たなバグが発生した」といった問題が生じます。これらを防ぐには、人の手による確認と補正が不可欠です。
最終チェックと丁寧な修正作業を経てはじめて、バグの少ない・ユーザー体験を損なわない移行が実現できるのです。
成功の鍵は「役割分担と準備」
StrutsからSpringへの移行には、各種の自動化ツールが用意されていますが、それだけで“すべて完了”とはいきません。現実的には、「自動変換で7割を対応し、残りは人手で仕上げる」といったハイブリッドなアプローチが最適です。
大切なのは、どこまでが自動で対応できて、どこからが人手の作業かを早期に見極め、計画と予算に反映させることです。ツールへの過信や準備不足が、移行失敗の原因となることもあるため、正しい知識と体制を整えることが成功の鍵となります。
スタイルズ社では、
- 設定ファイルやタグなど構造的な部分は自動変換
- ロジックや遷移、独自仕様といった意味的な部分は人手で補正
- テストやトレースによってズレを可視化し、品質を担保
という方針で、短期間かつ高品質なリプレースを実現しています。
StrutsからSpringへの移行をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。